『アメリカン・スナイパー』 〈2014年 米〉
名曲『君の瞳に恋してる』のイントロが流れた途端、涙腺がゆるんでしまう「パブロフの犬」状態にされてしまった大傑作の前作『ジャージー・ボーイズ』(’14)から打って変わって、イーストウッドの新作はイラク戦争で「伝説のスナイパー」と呼ばれた実在の男、クリス・カイルの物語。過酷な戦場と、真逆の家庭での生活を繰り返す男の心情を深く掘り下げ、見応えは確かにありました。でもどこかに戦争の甘い魔力を肯定しているような気がして、わだかまりが残りました。近年のイーストウッド作は全て手放しで称賛してきただけに、ちょっと残念。でもその「わだかまり」まで計算に入っている、としたら、翁、さすがです。 〈TOHOシネマズ渋谷にて〉